松浦尚子のワイン日記

サンク・センス代表取締役社長/ボルドー国立大学公認ワインテイスター

レストランの様子23月27日(火)銀座にある、最高級フレンチレストラン「ル・シズィエム・サンス」を借り切って、まさに一年間の締めくくりにぴったりの華やかな、素晴らしい一夜を約20名の方々と過ごすことができました。

「クロ・ド・タール」の名前を知っている方は、とても通!と思うぐらい、小さなブルゴーニュ地方のグラン・クリュ、つまり特級畑からできるワインです。モレ・サン・ドニという小さな村の中でも、たった7,5ヘクタールに広がるに過ぎません。しかし、この全体から見れば猫の額のような土地から、ワインの専門家、世界中のファンから絶賛される卓越したワインが造られているのです。

クロドタールとりわけ、このワインの素晴らしさを引き出したのが、1995年より醸造責任者に就任し、1996年よりワインを手掛ける、シルヴァン・ピティオ氏の存在です。地勢学者であったピティオさんは、ワイン専門書の有名な著者を父に持つ奥様と結婚されたことをきっかけにこの世界に入り、学者らしい賢明かつ、畑を何よりも第一と考える地に足のついた地道な仕事により、クロ・ド・タールの実力を一層世界に知らしめてきました。

セラーにてこの夜は、来日されたピティオさんのお話を聞きながら、地下一万本のワインが眠る秘蔵セラーを見学、シャンパンでアペリティフを取った後、階上のレストランで、ドミニク・コルビシェフからの特別メニューに合わせ、白ワインと3種のクロ・ド・タール垂直試飲をするという、またとない機会でした。

全てを書ききれないのは残念ですが、その模様はこちらにレポートしてありますので
どうぞご覧ください。

コルビさんとにかく、素晴らしかったのが、もちろんワインを造っているご本人から直に多くのことをお聞きできることが一つ、そして今回、ピティオさんとコルビシェフというまさに二大巨匠が、それぞれワインと料理に腕を振るった饗宴になったことでした。前菜の春野菜のシャルロット仕立ても季節を感じさせた一品で鯛のポアレすが、2皿目の「天然真鯛のポアレ アスパラガスと茸の軽い煮込みを添えて」と2004年のクロ・ド・タールは、鯛のソースの複雑さとお魚の旨みが、まだみずみずしい芳香で繊細な2004年にぴったりでした。魚は白ワインと思いがちなのを、どうだと言わんばかりにコルビシェフが料理とワインの幅の広さを教えてくれた一品でした。


カモとの素晴らしいハーモニーメインの「シャラン産カモ胸肉のロースト ハチミツ風味」も素晴らしく、そえてあったモリーユ(あみかさ茸:フランス三大キノコの一つでとても高価なもの)と1996年を一緒に口にすると、最高であるとピティオさんからのお墨付きとなりました。96年は、すでに10年の熟成を経て、森の下草のようなブーケを出しはじめ、リコリスやきのこを思わせる、そう、えもいわれぬ香りとはこのことかと思う、素晴らしさでした。そして茶目っ気のあるコルビさんが、「ソースを味見したときに、なにかもう少し足りない。96年の香りをかいで、そうだ!と思い切った」というコメントを(ピティオさんに遠慮しつつ!)披露。なんと96年を少しだけソースに隠し味として入れた、とのこと。舌の肥えたお客様たちからも、一様にこの絶妙の組み合わせに感激したとコメントを頂戴しました。

ピティオさんと一緒にピティオさんの説明は、ワイン初心者にも詳しい方にも満足いただける、非常に分かりやすいものでした。ワインの魅力を知ってもらうための教授法に長けた方であり、技術者でありながら、そして誰よりも詳しい知識を持ちながら、ここまで砕いて話ができるバランス力に脱帽した次第です。当日は、全ての通訳を任され、汗をかきかき頑張りましたが、スマートなお客様にも助けられ、なんとか無事終えることができました。

ピティオさんとコルビさんのお力により、素晴らしいソワレとなったこと、当日までの実施に多大なご協力いただいた皆様、ご出席の皆様に感謝いたします!