松浦尚子のワイン日記

サンク・センス代表取締役社長/ボルドー国立大学公認ワインテイスター

オーナーの方々と打ち上げ3月17日(土)、18日(日)は、日本ワインのメッカとも言える、山梨県勝沼町の勝沼ワイナリーズクラブが主催する「ウィークエンド・ワイン蔵めぐり」に行って来ました!2日間、午前と午後2回に渡り、オーナー自らが畑や醸造所を一緒にめぐり、たっぷり説明してもらった後に試飲もするという、ワインファンならずとも見逃せないイベントです。(写真は、昨年10月の訪問でお世話になった原茂ワインの古屋社長)


ワイン談義の模様私は今回、初日の夜に現在クラブの会長を務められる三澤さんが指揮を取る、グレイスワインこと、中央葡萄酒で夕方より開催される「ワイン談義」に講師として呼ばれる光栄に与りました。昨年は、メルシャンの技術責任者の方から、今甲州の中に見つかり、注目されている「きいろ香」に関する研究結果の話があったとのこと。従って今年は少し技術的なことから、「世界の食文化に触れた話を」と依頼されたのでした。幅広いテーマをまとめるのは、なかなか難しいことでしたが、フランスでの滞在経験に合わせ、後半には上海、チリを訪れた際に見聞きした現地のワイナリーの様子や食文化について、映像を交えながらお話ししました。終了後は、オーナー8名の方と参加者一同で、15種類ほどのワインと食事をいただくというとても充実したイベントでした。

雨宮さんと樽さて、もちろん2日間には蔵めぐりに参加してきました。初日はダイヤモンド酒造へ。オーナー兼醸造家の雨宮吉男さんはボルドー時代の友人で、今回の講演のきっかけをつくってくれた人物です。まさに職人肌で、ワインダイヤモンド酒造試飲への溢れ出んばかりの情熱は、若いこれからを担う造り手として期待を寄せたい一人です。日本では他国のように広い自社畑を持つことは困難で、契約栽培農家に栽培を依頼し、できるだけワインに適した品質の優れたブドウを収穫できるよう一緒に研究、指導していくことも大切な仕事の一つです。ダイヤモンド酒造では、他の多くの勝沼町のワイナリーと同じく、地元特産品種の甲州からできる白ワインと、日本ならではのマスカットベリーAから造る赤ワインに力を入れて
いました。

2人で様々なお話をじっくり聞いた後、オーク樽で熟成中の赤ワインを直接出してもらい、ブドウ生産者の違いを比較するなど、蔵元ならではの内容もとても魅力的でした。試飲では、その年の出来などを聞きながら、おつまみも出してもらいなんと8種を試飲!2004年が近年最良のできだったようで、「ひしやま甲州」という甲州100%から造られながら、シャルドネのようなふくよかさとバランスを感じさせる魅力的なワインも紹介してもらいました。マスカットベリーAも正直なかなか美味しいものに巡り合えないことが多いのですが、雨宮さんの気持ちがこもったワインは、非常に凝縮感があり、それでありながら特有の果実味のフレッシュさや、少し土を感じさせるようなニュアンスもあり、参加者一同に好評でした。

母屋翌日は、山梨ワインへ。専務の野沢たかひこさんが案内してくださいました。歴史を感じさせる母屋は昔の養蚕農家の一軒屋を丸ごと移築してきたもので、とても立派でした。醸造所横にある自社畑では、以前植えたカベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネを接木して、今度もう少し暑い地域に適した、シラーやタナといったブドウ品種に替えていくことも検討されているとのことでした。気候の温暖化に伴い、これから勝沼町の気候にあったブドウ品種も少しずつ変わっていくのかもしれません。
野沢さんと自社畑昔は、6〜7割が甘口だったというラインナップも野沢さんの代になってからは、辛口が半分を占めるそうです。4割が個人のお客様とのこと地下の立派な蔵で購入いただいたワインを預かるシステムもあるらしく、造ったところで保管してもらい、飲みたい時期に取り寄せるという顧客から見れば願ってもないサービスをされているのも印象的でした。


試飲の様子日経のプラス1で国産ワインとして第3位にも入賞した、カベルネ・ソーヴィニヨン七俵地畑2004も試飲させてもらい、果実味と出過ぎない上品な樽香、十分なボリューム感と余韻にも心地よいタンニンが味わえ、素晴らしい出来映えでした。野沢さんも毎年こういうワインができれば満足なのだけれど、とワインが毎年の天候に左右される農産物であるがゆえの大変さと、喜びを感じさせる感想をもらされていました。知的で、わかりやすい説明をしてくださった野沢さんも若手の一人。ワイン造りにはこれで終わり、という完成形はなく、常に先へ先へと進み、次世代へ引き継がれていく郷土の財産なのだと実感した2日間でした。