先のつづき。いよいよ2つ目のワイナリーです。フランスは、ボルドー最高の赤ワインとして名高い「シャトー ラフィット・ロートシルト」を所有するロスチャイルド家が提携をしようと、南米チリにある無数のワイナリーの中から、厳選に厳選を重ねて選び出したのがこちらの「ロス・ヴァスコス」。首都サンティアゴから約3時間南下したところにあるラペル地区、赤ワインで名高いコルチャグアヴァレーで、600ヘクタールに及ぶ広大なブドウ畑を丹念に手入れし、ワインを造っています。
ロス・ヴァスコスはもともと、1750年にチリに移住したバスク系のスペイン人によって創業され、名前はすばり、「バスク人たち」という意味。バスク地方好きの私には、親しみを感じてしまう名前です(笑)。以来、19世紀半ばには、最も早くフランス系ブドウを植え付けたチリワインの改革者の一人として、確固たる地位を築きました。そして、1988年に偉大なパートナーとして出現したのがフランスのロスチャイルド家、という流れです。
さて、出迎えてくれたのが、ブドウ栽培責任者の、エンリック・マルケーズ氏。チリではじめてフランス語を流暢に話す人に会い、なんだかほっとしたのも束の間、さっそく四駆に乗ってブドウ畑に繰り出します。全ての敷地が見渡せる小高い丘にはチリ、フランス、そして日本の国旗が。なんと私たちのために掲げてもらったと聞き感激。ブドウ畑では颯爽と走るバイク姿の男性に遭遇しました。エリアごとに6名の栽培チーフがいて、バイクで見回り労働者に指示を出しているとのこと。中にはバイクに乗れないチリ人もいて、馬で見回っているそう。その規模が想像できますよね。
植えてあるブドウ品種は、ボルドーに則り、80%がカベルネ・ソーヴィニヨン。残りは、カルメネールやマルベック、シラーも約1,5ヘクタールほどあり成功しつつあるとのこと。ところで、南半球であるチリでは、11月下旬はちょうどフロレゾン(開花:花冠がとれて白い花を開花し、自家受粉が行われる。結実し、小さな固い緑色の果粒を持つ房が形成される。)の時期。半分結実した房を見ることができとても興味深い季節でした。収穫は、3月ごろ。500人で約1ヶ月を要するそうですが、エンリックさんの腕の見せ所はまさにその段取り。大仕事です。広い敷地を見せてもらうと、空き地ではオリーブの木や胡桃、ノワゼット、ピスタチオの木を育てて楽しんでいる、とのこと。コルク樫まであり、将来的にはここでコルク栓を作れたら、なんて楽しいお話もあって、余裕を感じました。
その後、醸造担当者のチリ人マキシミリアーノさんも加わってくれ、醸造の説明もしっかりとしてもらうことができました。中で
も、ロス・ヴァスコスのプレミアムワインである、「Le Dix(ル・ディス)」には相当な力の入れようで、樽は全てフランスのラフィットで作ったものを使い、現在は134のフランス産オーク小樽を使用していました。その後、テイスティングルームに移り、7種類のワインをテイスティング。造っている方々の意見を聞きながらできる試飲は格別に興味深いもの。1本目、酸が生き生きとしたフレッシュなソーヴィニヨン・ブランは生牡蠣に合わせたいという話からはじまり、締めのル・ディスは2001年をテイスティングさせてもらいましたが、黒い果実のジャムを思わせるような凝縮した果実味が口を一杯に覆い、絹のようになめらかなタンニンと後口に少し焦がしたような香りも残りました。幅広い種類を造りながら、一つひとつのワインの完成度の高さに、そして打ち込む人々の姿勢を見ることができ、やっぱり来てよかったと思いました。
その後、少し離れたところにあるゲストハウスに招かれ、チリならではのランチをいただくという、とても光栄な思いもできました。センスあふれるゲストハウスのテラスでは、広々とした眩しい新緑の芝、遠くにうっすら見える山々の頂を目に、ゆったりとしたと心地よいソファーに身を委ね、ソーヴィニヨン・ブランをいただきます。一瞬「パラダイス」という言葉が思い浮かんだほどで
した。アペリティフの後、テーブルに席を移し、メインの仔羊にはグラン・レゼルバ(赤)を合わせ、締めのデザートは「チリモヤ」と呼ばれるチリならではのねっとりとした白いフルーツにオレンジソースを掛けていただきました。互いの文化の話で盛り上がり、単なるワイナリー訪問を超えるもてなしと、ゆったりとした時間の流れにすっかり魅了されてしまったまさに忘れ難いひと時となりました。